紅魔館の中庭に、立派な林檎の樹があった。
瑞々しい実がいくつもぶら下がっている。
きっと近く、門番かメイド長が、収穫するのだろう。
天狗の射命丸文は、ふわりと翼を止めた。
林檎の木が見える窓には、図書館の司書……小悪魔がいる。
文は不意に、悪戯心と淫欲を催した。
口と魔羅から生まれたような天狗である。
餌食を見れば舌は回る。
「おや、立派な林檎ですね。よく実って、美味しそうじゃないですか」
天狗はじっとりと、絡みつくような視線を彼女に向ける。
「ええ。きっと美味しいですよ」
小悪魔の返答は、いつも通り好意とも上辺とも知れない笑み。
天狗がちらりと窓枠から覗けば、小悪魔の肢体が見える。
小悪魔の乳房は、尻は、林檎にも負けず、布地の下でたわわに実る。
天狗道に堕ちた獣欲が、一瞬の間に異国の悪魔の肢体を這い回った。
「本当に美味しそうですねぇ……ちぎってもいいですか?」
文は欲望を瞬時に隠し、目をわざとらしく林檎に向けながら、しれっと聞いてみる。
「ねぇ、小悪魔さん。ちぎってもいいですか?」
昼日中。
地下の魔女も、館の主も、邪魔はできない。
頼れるメイド長は人里で見かけたし、門番は高いびきだ。
小悪魔はそんな天狗の背後から。
じっと、底知れない目で天狗を見ていた。
もったいぶった沈黙。
答えを待つ間、文は脚にぐぐ、と力を込めた。
獲物を逃さず、最速で味わい、契るために。
そんな様子を知ってだろうか。
司書は仄暗い笑みを見せる。
微笑ましいものをみたように。
「私は構いませんよ」
明らかに隠された意図を知っての答え。
「では、遠慮なく。登ってちぎらせてもらいますよ」
「ええ。おいくらでも。めしあがってください♪」
悪魔の微笑。
射命丸文は、一迅の風となって小悪魔に絡みつく。
手を、脚を、八坂の蛇が如く司書に絡め。
欲望にまみれ舌なめずりする形相も隠さずに。
中庭の林檎らが眺める中、小悪魔の体を蹂躙した。
さんざんに肉を契る。
それが、魂の契りとは知らぬまま。
荒い息、嗚咽めいた喘ぎ、淫らな水音。
天狗は獣となる中。
悪魔は笑っていた。
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久しぶりに超軽めのSSを即興で書いてみました。
元ネタは「柿の木問答」。
エロ表現における素晴らしい話術なので、ご存じない方は調べてみることお勧め。
自分の東方二次創作におけるヒエラルキーは目下、チルノ=小悪魔>レミリア=美鈴=雛>文>椛>その他、です。
(今後新しくメインで登場すると、違う位置になってくるキャラもいるでしょうが)