メイン2種族の詳細設定。
その他種族については、時間があれば明日にでも。
■エルフ■
白または褐色の肌を持つ美しい女性の姿をした妖精。長く尖った耳が特徴。ほぼ全てが成熟した豊満な体を持っており、母性的な穏やかな気性で知られる。薄布のみをまとっていることが多く、時には裸体や、草葉をまとうこともある。
エルフの名は植物や気候から付けられることが多い。人間の言葉と異なろうとも、たいていエルフの名にはそれらの意味がこめられていると考えるべきだろう。この名前は、あだ名めいたものであり、親がつけるものでもない。エルフの名は自身が名乗るか、周囲が勝手に呼び始めることで、徒名のようについてしまうものである。エルフは己の名に執着をほとんど持たない。気まぐれに名前を変えてしまうエルフや、他のエルフの名前を真似るエルフも少なくない。
彼女らは妖精郷の支配階級であり、他の妖精を産み出す“母”である(ただし妊娠率は低い)。エルフはゴブリンや人間、またダークエルフと交わることで子を為す。ダークエルフか人間と交わらねば、エルフは産まれてこないのだ。ダークエルフは十人に一人産まれるか産まれないかであり、妖精郷の中でも特殊な立場に立つこととなる(後述)。なお、エルフは本質的に多淫であり、その情熱は深く冷めやすい。およそどのような相手にも一夜限りの娼婦と化す本能を持つ。不老の体で子を為し続けるためにも、彼女らは日夜ゴブリンその他と交わっている。とはいえ、感受性の強さは精神の不安定さともつながっており、エルフの多くは老いることこそないが、五十年を数えることなく姿を消してしまう。
エルフには文化人、芸楽者としての面もあり、歌と踊りをよくする。武芸や労働に関わることはなく、実戦的な魔法も使えない。しかし、森の魔力を用いた、強力かつ特殊な魔法儀式を行うことができる。歌や踊り、時には情交すら伴う。こうした魔法儀式非常に強力であると同時に、彼女らの素直な欲求や願望を叶えるためのものである。これによって天候は彼女らの望むままとなり、“地霊樹”の近くにはいくつもの温泉や回復の泉が湧く。迷い込んだ人間は狼やゴブリンに変えられてしまうのだ。そして何より彼女たちの肉体や出産において、魔法儀式は多く用いられている。出産の苦痛をやわらげたり、産まれた子の成長を早めたりしているという。
支配階級……というよりも崇拝対象たるエルフは森の全てを所有するものと見なされる。このため、エルフたちに“所有”という概念がない。エルフは他のエルフ以外、森で目に付いたいかなるものも、己のものとして扱い、また持ち去る。そしてまた飽きれば適当な場所に置き去りにする。彼女たちは夜毎望む場所で眠り、目についたものを食し、また自らが産んだ子でなくともあやし、育て、また連れ去ってしまう。このため、エルフは自らが産んだ子がどう育ったか、どこにいるか、まったく知らないことがほとんどだ。
このことは森の周囲に住む人間の集落では重大な事態を起こすことが多い。森へ迷い込んだ人間がエルフに気に入られ、連れ去られ、帰って来れないことは少なからずあるのだ。こうしたエルフに連れ去られた人間を“チェンジリング”と呼ぶ(後述)。なお、人間からはエルフではなくゴブリンによって森に入った人間が連れ去られるものと考えていることが多い。
森の外に住む人間らの中には、エルフを森の女神と考える者も多い。事実、彼女らはゴブリンに崇められ、ごくごく気まぐれにではあるが魔法儀式で天候などを操って人間に恩恵を与える。人間の子供や若者を気に入れば、豊作をもたらすこともあるのだ。少なくとも森とその周囲に嵐がほとんど起こらないことは、エルフによる恩恵なのだ。森の近隣には、エルフらを崇める村も少なくないという。
■ゴブリン■
暗い紫や緑、赤、青、または茶色の肌を持つ幼い子供の姿をした妖精。エルフほどではないものの耳は尖り、頭に小さな角を持つ者も多い。男性しかおらず、生きた年月と関係なく幼い無邪気な性質を持ち続ける。彼らは裸体か、あるいは簡素な外套のようなものを纏っていることが多い。
ゴブリンの名前は基本的にない。彼らは肌の色や髪の色、目の色、髪型、角の数など、ごくごく単純な特徴で呼び合っており、エルフもまたそうした呼び方をする。よく似通った外見と精神性を持ち、上下関係を持たないこともあって、ゴブリンたちは彼我の区別が薄い。好奇心が強い反面で、個性を持たないのだ。もちろん、中には強烈な個性や特異な才能を持ったゴブリンもいる。しかし、こうしたゴブリンも名前が異なるものとなる程度で、仲間から極端に異なる扱いを受けることは少ない。どうしようもなく“外れた”ゴブリンは、そもそもゴブリンではない別の妖精として名を与えられるだろう(ボガート、ノッカー、レッドキャップ、コボルド、バグベア、バンニクなど様々)。この未発達で幼い自我と、絶えることなきエルフ達の庇護は、エルフ以上に安定した精神性を与えている。多くのゴブリンは悪意ある人間に傷つけられない限り、数百年はこの世界で遊び続けるのだ。
ゴブリンたちは妖精郷の労働階級であり、エルフにとって永遠の“子供”にして“夫”である。彼らは雄として十分に機能する肉体を持ち、精力も強いが、その性質は子供そのままだ。特定の母に帰順する習慣がなく、またエルフら自身が己の子を育てることにこだわらないため、ゴブリンはほぼ全員が実の母たるエルフとも交わっている。母子は互いの存在すら認識しないということはなく、交わる際においては双方が互いに血縁ある母子たることを認識した上で交わるという。
労働階級とはいえ、ゴブリンの労働は“遊び”と“もてなし”である。母にして妻たるエルフを迎える準備であり、彼女らに褒められ、夜の営みを濃厚にするためのだ。彼らは住居を造り、装飾品を作り、食料を集め、料理することを楽しむ。ゴブリン達は手品めいた魔法の使い手であり、様々な労働をほとんど遊びの感覚で行ってしまう。ゴブリンの魔法は多くが幻惑や手品に似た効果だが、たいへん素早い。瞬時に何のそぶりも見せず姿を消したり、壁を通り抜けたり、茂みから茂みへと移動したり、材料から道具を作り上げたりしてしまう。こうした魔法は、人間からの盗みにも多数用いられている。衣服を剥ぎ取ったり、ポケットのものを奪い取る時、彼らの魔法は最大の効果を発揮するのだ。
毎年エルフ達は、何百人ものゴブリンを産む。にも関わらず妖精郷におけるゴブリンの人口が一定に保たれるのは、ゴブリン達が積極的に森の外へも出てゆくからだ。ほとんど森から出ることのないエルフと異なり、ゴブリンは物怖じせず、好奇心が強い。妖精の森近隣の人里には、民家にゴブリンが住み着くことも多々あるほどだ。こうした人里に住み着くようになったゴブリンを、妖精郷のエルフ達はホブゴブリンと呼んでいる(人間からはブラウニーとも、詳細は後述)。他にもゴブリンは森から出て様々な場所に住み着いており、妖精郷の詳細を知らぬ人間らは、エルフと全くかかわりのない小鬼と考える場合も多い。
ゴブリンは森に迷い込んできた人間の女に対し、エルフと同様に接することが多い。このため、森に住む魔女や女薬草師には、多数のゴブリンと肉体関係を持ち、代わりに使い魔の如く使役している者達もいるとか。しかし、人間がゴブリンと交わり続けることには、ある問題がある。人間とゴブリンの間にはゴブリンしか産まれない。しかも、個人差こそあるものの何度かゴブリンを産んだ女性はエルフとなってしまう。この事実は、ゴブリンたちの存在が真にエルフを生み出し、妖精郷を維持していることを示唆している。長くゴブリンと交わり続けた魔女たちは、多くがエルフとなって森の“母”を任されるのだ。
また一方で、人里の幼い子供らがゴブリンと遊び、森の中から帰って来ないことがある。こうした時はたいてい、ゴブリンではなくエルフが、その子を魔法によってゴブリンに変えている。ゴブリンたちはエルフに産ませる以外の方法では、同族を増やさないのだから……。
人間にとって基本的に、ゴブリンはふしだらで鬱陶しい小鬼たちだ。森の外でも“所有”という概念を持たない彼らは、人々の家に平気で入ってきてはものを持ち出してしまう。また作物を食べたり、家畜を逃がしてしまうことも多い。しかも、魅力的な女性には場所や状況を考えることなく悪戯し、時にはそのまま交わってしまう。ゴブリンとある程度の友好(あるいは肉体関係)を結べるのは、子供たちと魅力的な女性だけである。このため、家畜や男衆らが酷い目に会うことも少なくない。ゴブリンはおよそ手加減を知らないし、彼らの遊びに暴力を持って応えて来るものには容赦しないのだ。