全年齢版として改めて、世界観や雰囲気の説明を。
『Ventangle:All Range』は
24世紀を舞台とした魔法アリのサイバーパンク。
妖精や神がいて、サイバー化もある未来世界。
とはいえ諸事情でネットは不便で、ネットダイブもできない。
基本はGM1人、PL1人用のシステムですが。
PL複数でも一応遊べます。
以下は委託店見本にも使っていた、本書の冒頭記事から。
年齢制限版から内容一部変更されています。
■24世紀、堕落の坩堝
大戦争は起こらず。
大災害は起こらず。
環境破壊は止まり。
エネルギー問題も解決した。
そして……人類は堕落した。
堕落が“大変革”を呼び、世界を歪め、書き換えた。
科学と魔法が複雑に絡み合い。
機械と妖精と神々が跋扈する。
富裕層は麗しきエルフの体で退廃に耽り。
債務者はオークの体で重労働を強いられ。
下水には、ゾンビやスライムが蠢くのだ。
今や世界はカオスに呑まれ、まさしく堕落の坩堝。
●魔術的サイバーパンク
「命なんて安いモンさ。人間に限った話じゃあない」
――バシネット、引退したハンター
舞台は未来都市だ。
いわゆるサイバーパンク。
それも魔法と科学が同居するサイバーパンクだ。
社会は、限られた富裕層に支配されている。
政府はなく、様々な組織が利権で動く。
目先の欲望に惑わされ、迷走する社会。
武力抗争も日常茶飯事。
武装警備員がアサルトライフルを手に巡回し。
魔術師は最新設備の研究室にて魔術式を組む。
無数の神がそれぞれ使徒を送り、教団を築く。
繁華街では、淫魔たちが客の袖を引いて誘い。
路地裏では、妖精や妖怪が駆けまわり悪戯し。
裏社会では、吸血鬼が犯罪結社を築きあげる。
市民とて無力ではない。銃も刀も持ち歩けるし、物騒な肉体改造を施す者も多い。
この時代、肉体改造はファッションも同然。
富裕層は理想の肉体に乗り換え、不老存在――エルフと化して退廃を極めている。
仮想現実を捨てた、地を這い続ける未来。
暴力と陰謀であふれた、極彩色の荒野だ
●デザインドヒューマン
「戦うために生まれた私と、生きるために戦うあなた。
どうして、あなたに勝ち目があると思ったの?」
――エクスペリメント、造られた戦士
科学が、人格転移を可能にした。
記憶と精神を、異なる肉体へと移す技術。
肉体が既存の人間である必要もないのなら……目的に沿って“最適化”した人間を作り出すのも道理。
かくして多様な特化型人類――デザインドヒューマンが生み出され、社会に配置されていった。
肉体労働特化のオーク。
富裕層の理想を体現したエルフ。
頭脳労働と愛玩用に特化したホムンクルス。
各種強化改造の土台たるオートマタ。
肉体そのものが分業化した社会。コストの問題がなくなれば、すべての人間が肉体を乗り換えかねない社会。
エルフの超感覚によって“魔力”というエネルギーが観測されなければ……社会はそうなっていただろう。
●魔力というエネルギー
ほどほどに不自由な“幸福”を愛しているのです」
――アレクシア、エリクスグループCEO
魔力とは、驚異的な万能エネルギー。
あらゆる物理法則を捻じ曲げ、概念にすらも干渉し、物質化による物体創造すら可能。
魔力の発見により、人類技術は飛躍的に進み。
進みすぎた結果、“大変革”を招いた。
世界に膨大な魔力があふれ、世界すべてが魔力を経て上書きされ、ありえぬ存在が次々と発生した。
すべては魔力から生まれた。
魔力が知性を獲得し、肉体を造り……妖精となり。
魔力が電子ネットワークの中に入り込み、情報言語の法則も捻じ曲げ強力な自我すら獲得し……神となり。
さらには、俗に魔術と呼ばれる魔力操作技術を誰もが修得しうる世界となってしまったのだ。
●ネットワークの神々
「かつてネットは一つだったそうですよ。そんな世界が
統一されてたような与太話、誰が信じるんでしょうね」
――ワードペイント、ニュース系配信者
科学技術の進歩に反し、情報ネットワークは我々のいる現代と同程度。公的ネットサービスは、むしろ後退。神経接続はできず、バーチャルリアリティによるネットダイブもできない。企業はネットから情報を隔離する。ウェブマネーの信頼は皆無で、現金(クレジット)第一の社会。
電子の海は、無数の神々に分断されてしまった。
神とは、高度な人格を得た魔力の塊。
彼らは自らを定義化すべくネットに降臨し、魔力にて自身の情報領域を隔離。電脳上に異界を作り出した。
今やネットワークは神々の乱世。電脳領域の奪い合いが常態化し、安全性からはほど遠い。かろうじて娯楽やSNS、個人間の連絡に活用されている程度だ。
●堕天特区
やったのによ。ま、俺も戻ってきちまったクチだがね。
呪われてんじゃねぇか? アンタ、死ぬんだぜ?」
――サルバトーレ阿垣、崩月会若頭
そんな世界で、最も混沌とした多層都市。
彼の“大変革”にて墜落したコロニーに築かれた都市。
悪名高き“堕天特区”にて、あなたの物語は紡がれる。
魔法が最も強く働き、神々と妖精の集う場所。
魔法を活用せんとする企業が群がり、顕現した神々に導かれた教団が乱立、利権を巡り犯罪組織も現れる。
政府はない。治安維持は民間警備会社の業務。
頂上部には富裕層や大企業、大教団が居を構え。
コロニー内部はそのまま広大な住宅都市として活用。
外壁部は、工場や研究所、施設、倉庫などで覆われ。
一方、傾いて日陰となった背面は混沌とした貧民街。
さらに妖精や神が生み出した異界も、各地に現れた。
上下に、表裏に、狭間に、広がる都市。今や住人すら全貌を掴めぬ、まさしく魔窟だ。
●ハンター
「申し上げておきますが、“手下みたいなもの”と手下
はまるで違います。我々の業界ならば、なおさらに」
――ヴァローナ、黒衣のフィクサー
混沌の社会には、“どこにも属さぬ者”の需要がある。
汚れ仕事、秘密にしたい仕事、犯罪協力。
そんな都合のいい人材を“ハンター”と呼ぶ。
あなたもまた、ハンターとしてこの世界を駆ける。
ハンターは探偵であり、傭兵であり、賞金稼ぎであり、護衛であり、情報屋であり、暗殺者であり、犯罪者だ。
ハンターへの依頼人は……どうしようもない崖っぷちにいるか、使い捨ての駒が欲しいかだ。
相応の警戒と覚悟を以て、仕事を受けよう。
毎日、幾人もの自称ハンターが使い捨てられる。
自他共に認めるプロハンターは、ほんの一握りだ。
●終わりなき混沌
「この都市はまさにエントロピーの体現。身も心も社会
も腐り落ちる。嗚呼、なんと悲しいことでしょう」
――ナイ神父、星智教団の代表
堕天特区は混沌とした都市だ。
無数の勢力が乱立し、監視社会にはほど遠い。
監視カメラはあるが各組織の敷地内、施設内のみ。
新たな魔術が見出されるごと、新たな妖精や神が現れるごと、都市の混迷は増すばかり。
何の力もない一市民とて、ある日突然神の使徒(アポストル)や妖精混じり(チェンジリング)、あるいは吸血鬼(ヴァンパイア)になりうる。
すれ違った少女が、神の化身(アバター)かもしれない。
そんな社会では、どんな強者も転落しうる。
堕天特区は常に混沌とし。暗がりに何が潜むか、次の瞬間に何が起きるのか……神ですら知りえない。
悪徳と陰謀が紡がれ、同じ数の伝説と英雄が生まれる。
そんな中で後ろ盾の組織を持たず、ハンターは生きる。
そのハンターが都市の闇に呑まれるか、栄光を掴むか。
すべてはあなた次第。
幸運を祈る。
「どうにか生きてんだから、アンタも俺もツイてるのさ。
懐具合についてはまあ……置いとくとして、だ」
――ワンダラ―、外壁区下層の探偵