自分が思いついてメモをしつつも、使いどころがなくて放置しているネタの一つに。

破顔があります。

今日はこのアイデアについて供養の気持ちを込め、ひとつ話をさせていただきましょう。

破顔とは本来、顔をほころばせにこやかにする意味です。

しかし、三島由紀夫が「禁色=ホモセクシャル」というイメージをつけたように。

(禁色とは本来、朝廷関連の言葉でそういった意味はなかったそうです)

自分としては「破顔=アヘ顔」という方式を流行らせられないかと、一時は虎視眈々とねらっていたのです。

結局使う機会もなく今に至るのですが。

……例によって東方を題材に使わせていただきますと、次のような使い方を考えておりました。

 

慧音「なんと見事な破顔(注)……!」

妖夢「まだまだ修行中の身でございます」

幽々子「け、けっこうなおてまえ、れひたぁ~」

破顔とはかつて阿片顔(通称アヘ顔)とも呼ばれた忘我の表情である。

相手をこの表情にさせ、表情の眉目を競う雅な競技。

技芸として世に広まると共に、阿片の名を抱く通称は忌まれ、破顔という呼び名に変わった。

弾幕ごっこが幻想郷の表の名物であれば、破顔はまさに裏の名物と言えよう。

 

うーん、流行らせるには一発ネタすぎるでしょうか。

ちょっと趣向を変えてみましょう。

 

天子は破顔していた。

笑いながら泣きながら破顔していたのだ。

破顔とは、女が気を遣るにおいて見せる最上の痴態である。

待ち望んだ衣玖の精は、天子を忘我の極みへと押し上げていた。

 

う、うーん……前に書いた衣玖天SSの流れでやってみましたが……。

なんというか、すごく微妙ですね。

アヘ顔という言葉を文中に入れる時点で、かなりハイテンションな淫語系エロSSを目指すべきなのでしょう。

いや、そういうのが書けないわけじゃないでんすけどね。

ないんですけどね(汗)。

そうすると破顔って使う意味がないっていうか……。

エロとしてテンポが狂うから、最初からアヘ顔でいいじゃんっていうか……。

でも現代じゃまだ、アヘ顔って言葉はハイテンション系なんですよね。

 

自分とは世代の異なる方も読んでいらっしゃるでしょう。

そういった方のため改めてアヘ顔という概念について自分なりに説明いたしましょう。

アヘ顔という概念自体、ここ10年ばかりで現れたとても新しいエロ表現と言えます。

2013年の今日。

かつてエロよりもネタとして扱われた数多のエロ表現が、今では立派な扇情的エロ表現となっています。

環境と情報によって、何がエロいか、何が卑猥か、は常に変化しています。

既に現代では、現実とエロ表現は大きく乖離し、いかなる視点でも混同されるべきでないと考えるのですが。

まあ、面倒になりそうなのでこういった話はさておきます。

アヘ顔、ひょっとこフェラ、淫語、腹ボテなど、ほんの十年前にはなかった用語であり概念です。

腹ボテといえばむしろ中年太りの表現だったのですから。

ツンデレ、ヤンデレといった言葉すらなかった時代もありました。

キャラクターの属性というものが確立されず、ただ「美少女である」ことだけが二次元ヒロインの条件でした。

二次元エロ表現というものは、まさに自分達の世代の歴史(三十代後半~四十代男子)です。

エロ劇画はもっと古くからありましたが、それは今日のエロ漫画とはまったく異なるものでした。

そして当時のエロ漫画もまた、今とはまるで違うものでした。

性的嗜好は狭く、また一定の形になりがちで、作者の照れが混じることも少なくありませんでした。

プロアマを問わず多くの作家が、本当に試行錯誤を重ね今の形式とジャンル分類が生まれたと言えるでしょう。

今日では、新たに生まれた概念が多数加えられています。嗜好の幅も広がりました。

おそらく今後も増えてゆくでしょう。

あるいは風化してゆく概念もあるかもしれません。

そしてそれ以上に、ただ書かれ描かれ消えていったエロ表現というものが大量にあります。

自分もエロ表現者として、それは本当に理解してます。

エロ表現者にはエロ表現者としての矜持があり、

たとえ読み流されようと“これはいける”と書き手描き手は思ったポイントというものがあるのです。

自分も、このシーンは改心の出来映え!とか。

この描写はいける!とか。

そういった手ごたえを感じつつエロ表現をします。

様々な作家様ごとに異なる手ごたえがあり、動き方があるものと思いますが。

自分の場合、根っこはウケ狙いなんで(笑いにせよエロさにせよ)、時折まじめな話に変なネタを入れちゃうんですよね。

というわけで、ネタ系エロSSででも使おうと思ってましたが……。

ネタ過ぎて四コマくらいにしかならないでしょうね……破顔

思いついた頃は、アヘ顔という言葉が風化する前にと焦ったりもしたものですが。

どうにもだらだらとした話になってしまいましたので、オチ代わりに最初の東方二次の続きでも書いておきましょう。

 

妖夢が馴れた手つきで茶せんを使い、かきまぜる。

相手は幻想郷でも名器と名高く、また妖夢の主でもある西行寺幽々子である。

静謐な部屋の中、幽々子の荒い息と、茶せんの立てるぬちゃぬちゃという音だけが響く。

ついに幽々子が震え、のけぞりながら達した。

慧音「な、なんと見事な破顔(注)……!」

妖夢「まだまだ修行中の身でございます」

幽々子「け、けっこうなおてまえ、れひたぁ~」

破顔とはかつて阿片顔(通称アヘ顔)とも呼ばれた忘我の表情である。

そして相手をこの表情にさせ、表情の眉目を競う雅な競技を茶道と呼ぶ。

茶道が技芸として広まると共に、阿片の名を抱く通称は忌まれ、破顔という呼び名に変わった。

弾幕ごっこが幻想郷の表の名物であれば、茶道はまさに裏の名物と言えよう。

妹紅「これが茶道か……外じゃよくわからんもんが流行ってるんだな」

輝夜「傾奇とか言うらしいわね」

布都「奇怪にしか思えぬ我は考えが古いのか……?」

ナズーリン「うん、道具屋が言ってたから間違いないね。この道具の使い方は器をかき混ぜて相手をもてなすんだ」

小傘「そうそう、さどーって確かそういう意味だったよ!」

マミゾウ(…………ないわー)  ←現代から幻想入り

 


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